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またあった。
  由里は右手の工事現場の塀に、×印を見つけた。
  塀とは言っても簡単なモノで、合金の板を何枚か並べて立ててある程度のモノだが。
  その塀に赤いチョークで×印が書かれていたのだ。
 
  そして、その×印を見つけると、しばらくしてドン!という大きな音が聞こえてくる。
  もちろん、工事現場なのだから、大きな音がして当たり前ではあるのだが……

 その工事現場は、由里の通学路になっていて、毎朝その現場横を通っている。
  そこにいる警備員のおじさんとも親しくなって、毎朝、挨拶をして通っている。
  その通学路に現れる×印
  それは毎日のように増えている。

 警備員のおじさんに聞いてみるのだが、工事関係で×印を付けている訳ではないという。あと、どうも×印を書いているのは、夜の事で、現場に人がいなくなった頃らしいのだ。
 
  その日も、×印を見つけた由里の耳に、物凄い大音量の衝撃音がした。
  思わず、耳を塞いでしゃがみこんでしまったが、何かが落ちてきた訳ではなかった。思わず警備員のおじさんも飛んで来てくれたのだが、現場には何もおかしなことはなかった。
「一応、ここは大丈夫なはずなんだけど、通学路変えた方がいいかもしれんね」
  と警備員のおじさんは言ってくれるのだが、由里は毎日この道を通った。この道以外を選ぶと、5分は違うのだ。音くらい怖くない!

 毎日毎日、由里は工事現場の横を通って学校に行く。
  毎日毎日、工事現場の塀の×印は増えていく。

 
  気持ちが悪くなって、警備員が洗い流したりもしているのだが、次の日からまたちゃんと×印が書かれ、一日一日と増えていくのだ。

ある秋口の寒い日。
  由里がまた工事現場の横を通った。
  ×印がまた増えている。
  そういえば、この×印ってどれも私の顔の高さだなぁ…と思った途端、こめかみに衝撃が走り、由里は血を吹き上げて、その場に倒れた。
  即死だった。
  犯人は、100メートル離れたアパートに住む男だった。
  由里の頭部からはパチンコ玉が一個発見され、現場には数百個のパチンコ玉が見つかっていた。

 

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