都市伝説2

 都市伝説の通りにやってみた。
  目を閉じ、自分の部屋を思い浮かべ、片っ端からドアや窓を開けていく。
  すべてを開け終わったら、今度はすべてのドアと窓を閉じていく。
  この間に、人影を見たら、それはその部屋に霊が取りついている証拠なのだという。

 麻鈴がこの都市伝説を試してみたのは、毎夜の怪奇現象のせいだった。
  毎夜毎夜、ギューギューという音や、シャワー室からの突然の水流音。ひどい時には、目の前で扉がバタンバタンと開閉することがあった。
  山下麻鈴が、大学の友人である本杉千佳に相談したのは、そんな頃だった。

 そして、千佳から「部屋に幽霊が憑いているかどうかのテスト」として教えられたのが、前述の方法だった。

 確かに、23区内でウォークイン・クローゼットがあり、さらに4つの洋間がある部屋で、月に10万円は破格の安さと言えた。しかし、訳あり物件には説明義務のある不動産屋からも、とくに説明はなく、単に偶然見つけたお宝物件だと思い込んでいた。

 しかし、住んでみた結果が、毎夜の怪奇音の連続だった。

 さっそく、大学から帰った麻鈴は頭の中で、部屋を行ったり来たりして、ドアや窓を開けしめしてみたのだが、誰にも遭遇しなかった。やはり、気のせいなのだろうか…
 

  夜も更け、ベッドに潜り込んだ麻鈴は、もう一度目を閉じて部屋の中を歩いてみた
  窓を見つけると窓を開け、ドアを見つけるとそのドアを開けた。
  が、やはり何者の姿も無かった。
  ここまでして何も見つからないとすれば、やはり何も居ないのか……と思いながら、麻鈴ウォークイン・クローゼットに入った。
  コートでも掛けられるように、高い場所にアルミのバーが通してあり、洋服が左右に並んでいる。ただ、それだけ。誰もいない。
 
  とつとつ、と想像の中でウォークイン・クローゼットの奥の壁まで歩いてみる。
 体に、アルミバーにかかった上着たちがサワサワと触れていく感触を思い出す。麻鈴はかなりの衣装持ちで、ウォークイン・クローゼットにはぎっしりと洋服がかかっている。
 それらの洋服には、どれにも思い入れがあり、両肩に触れる感触は心地よいものだった。

 と、どん。と重い感触が右肩に当たった。
 ふと見ると、掛かっている洋服たちの間に、見たこともないピンクのスーツが掛かっている。
『あれ? こんなの買ったかな…』
  と思い、そのスーツをよく見ようと、片手で押してみた。
  ぐるうり、と回転してこちらを向いたのは、アルミバーにロープをかけた女の首吊り死体だった。

 

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