留守番電話2

奈美枝の留守番電話に、気味の悪いメッセージが入るようになってから1ヶ月が経っていた。

 いつも、奈美枝が居ない時に限って、かかって来ていた。

 男か女かもわからない。
  ただ、ずっとすすり泣きを続けているのだ。
  3分ほどずっと泣き続け、そして切れる…

 夜に帰って来て、その留守番電話を聞くのは気味が悪かった。

「ねえ、電話番号換えようと思うんだけど」
  奈美枝はカレシの、拓也に言った。

「うーん、どれくらいかかってくる?」
「一週間に3回くらいかな」
「それくらい我慢すりゃ良いんじゃね? 就職活動とかで今の番号使ってんだろ?まずくね?」
「それは、そうなんだけど…」

 拓也とつきあい始めてから2年になるが、不思議と、この薄気味悪い電話の話になると言葉を濁す。

「とりあえず、もうちょっと我慢してみ。そのうち、かけて来なくなるって」
「そうなら、いいけど…」

 それでも、ずっと電話は続いた。
  酷いときには、一日に5件も入っている時がある。

 拓也は相変わらず「ほっとけ」と言うが、奈美枝は我慢が出来なくなっていた。

 実家の兄に相談の電話をしてみた。

『ふーん、そりゃ気味が悪いな。よし、最近は興信所とかで電話履歴とか調べてくれるらしいから、ちょっとやってみるわ。ヤバイ事になった後じゃ、遅いからな』
「うん、ありがとね」
『任せとけ』

 それから2週間ほどして、兄から電話がかかってきた。

『あのさ…調べたんだけど…』
「うんうん、それで、どうだった?」
『あの、電話…』
「うん」
『……お前の携帯からかかってたぞ』
「そ、そんな…」

 奈美枝は手の中で、受話器が凍り付くような感じがした
  ベッドの上の携帯電話を見つめる。

「私の携帯からって、どういう事よ!」
『いや、俺に聞いてもさ。ただ、調べによると、お前の携帯電話の番号からかかってるんだわ』
「ま、まさか、拓也が…」

 受話器の向こうで、兄が息を飲むのが聞こえた。

『拓也って、お前のカレシの?』
「そう。そう言えば、あの電話の話になると、妙にそわそわしてたし。きっと拓也が、私の知らない間に、私の携帯で」

『お、おまえ、拓也って、半年前に事故で死んだじゃん』

 奈美枝の耳には、もう兄の声は入らなかった。
「そうだわ、きっと拓也よ。拓也がいたずらしてるの。拓也よ拓也。拓也よ。拓也よ…拓也…拓也……」
『な、奈美枝…』

「拓也…拓也…拓也…拓也……拓也……

 

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