老婆

 心霊スポット巡りの帰りだった。
まだ道は暗く、人通りも無い田舎道のため、車はハイビームで道を照らしながら走行していた。
 キヨミリエ、女二人だけの心霊スポット巡りだった。
 しかし、特に幽霊を見ることも出来ず、疲労感と虚脱感の帰り道だった。

キヨミが運転をして、リエが後部座席でウトウトしていた。

「リエ、あんなとこにお婆さんがいるけど」
「え、なに?」
「お婆さん、ほら」
「うわ、本当だ。人間かなぁ?」
「なに言ってんのよ。徘徊とかいうヤツでしょ。ほっとくわけにいかないんじゃない?」
「ええ、マジィ?」

キヨミは道路脇に、たたずむ老婆の横で車を止めた。
老婆はうつむき加減に立っており、右手には大きな紙袋をぶら下げていた。

「お婆さん、家に帰るんだったら、送りましょうか?」
と、キヨミが声をかける。
老婆は一瞬ためらった様子をみせたが、「お願いします」と深々と頭を下げた。
リエが後部座席のドアを開けると、「ありがとう、ありがとう」と頭を下げながら、車に乗ってきた。

再び、車を発進させながら、キヨミは後部座席の老婆に声をかけた。
「どちらに行かれるところだったんですか?」
「…いえ、うちに帰るところで」
「あ、そうなんですか。こんな遅くまでどちらに」
「息子夫婦の家に行ってまして」
「お一人でお住まいなんですか?」
「はい」
「近くなら、息子さん夫婦と一緒に住めばよろしいのに」
「…あんな、嫁と暮らすくらいなら…」
老婆の声に、イヤな響きが含まれたため、キヨミは世間話は切り上げた。

「キヨミ、おしっこ」
突然、リエが言い出した。
「ええ!こんなとこにトイレなんかないよ」
「いいよ、そこらの草っ原でするからさぁ、早く!」
「もうちょっと行けば、コンビニくらいあるんじゃない?
「 もう漏れそうなんだってば!早く早く」止めて」

「仕方ないなぁ」
キヨミは、適当な原っぱに車を突っ込ませた。
「怖いから、懐中電灯で照らしてて」
「わかったわかった」
「ごめん、お婆さんも、この懐中電灯で」
「アンタねぇ」
「お願いします」

キヨミリエ老婆が車から降りる。
リエ「漏れる漏れる」と言いながら、草っ原の奥へ入っていく。
その後に付いていくキヨミ老婆

「もうその辺りでいいんじゃない? 道からずいぶん離れたよ」
キヨミが懐中電灯でリエを照らしながら、そう言った途端、リエが振り返りながら突進してきた。
「な、なに?」
キヨミは突き飛ばされるように押された。
すぐに耳元でリエの声がする。
「走って!」
  キヨミは訳もわからず、リエに脇を抱えられるようにして走り、車に戻ると助手席に押し込まれた。
  運転席にリエが乗り、すぐに車を発進させた。

「ちょ、ちょっと、リエなにやってるの」
「あ、あの婆さんの紙袋のなか」
  後部座席に置き去りにされていた紙袋。
  キヨミは体を捻って紙袋を取ると、そっと袋の口を開けた。
  女性の血まみれの生首が入っていた。

 警察に駆け込んだ二人は事情調査を受けて、その日は家に帰れる事となった。
  翌日、テレビで息子の嫁を殺したとして、老婆が逮捕されていた。逮捕される瞬間まで、包丁を振り回し暴れ回ったそうだ

 

 

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