隣室の物音

 亜美はベッドの上で耳を澄ませた。
  また、あの音が聞こえる。

ず……ず…ずず…ずずず……

 何か重いモノを引きずるような音だ
  音は隣室から聞こえてくるのだが、その隣室は空き部屋だった。

 管理人に頼んで、実際に隣室を開けて見せてもらったのだが、やはり人は住んでいなかった。
  それどころか、床にはホコリが溜まっていて、ここ数ヶ月の間誰も侵入した形跡もなかった。

 しかし、夜になると、やはりあの音が聞こえてくる。

ずず…ずう……ず…ず……ずずず……

 何かが這いずり回っているような…
 
  亜美は決心して、ベッドから立ち上がった。
  そっと足音を忍ばせて、机に歩み寄り、引き出しからカナヅチを取り出す。
  右手にカナヅチを握り、左手にプラスドライバーを握りしめる。

 このドライバーを壁に打ちつけるつもりだ。

 アパートはモルタル造りで、きっとドライバーは壁を突き抜けて隣室まで届くはずだ。
  そして、空いた穴から覗いてやれば、隣室で何が起きているのか分かる。
 
  亜美はゆっくりと壁に歩み寄った。

ず………ずず……ずうず…ずずず……

 ドライバーを壁に当て、カナヅチを構える。

そして、振り下ろす!

 ドライバーが壁に埋まった瞬間、隣室から悲鳴が上がった。
  そして、壁から真っ赤な血しぶきが噴き出した。

「きゃあああ!」
  亜美は悲鳴を上げて部屋を飛び出して行った。

 翌日、警察の手によって亜美の部屋の壁と、隣室の壁との間から死体が発見された。
  それは、覗きを常習していたアパートの管理人の死体だった。
その額にはドライバーが突き刺さっていた。

 

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