おいてけ堀

注) この物語については、厳密にはオリジナル作品とは言えないかも知れません。
「本所七不思議」というものの中に「おいてけ堀」という話があります。
ただ、これと言った物語がある訳ではなく、単に『「おいてけ!」と言うお堀がある』というだけです。

 ですが、不思議な事に私は、「おいてけ堀」のちょっとした物語を<知っている>のです。
  しかも2バージョン。
  なので、おそらくは私自身が勝手に考え出したストーリーで、勝手にそれを人に聞いたか何かと勘違いしたのかなと思い、
ここに発表する事にしました。
さらに、途中でストーリーを分岐させて、2バージョンを両方読めるようにしました。

 もし、この話を他で聞いた事がある方がいらっしゃれば、是非メールなどでお教えくださると嬉しいです。

 

加代は木戸を開けて、空を見上げた。
  もう、日は西に傾き、光の色が朱色を帯びてきている。
  隣村の医者の所へ向かうとしたら、帰りはかなりの夜更けになってしまう。


  もちろん、女一人が出歩ける刻限ではない。
  しかし…

 振り返ると、囲炉裏から少し離れた所に布団が敷いてあり、そこに真っ赤な顔をした赤子が横になっている。
  赤子は頬を紅潮させ、口を半開きにするとゴロゴロと喉を詰まらせながら息をしている。

 赤子の様子がおかしくなってきたのは、五日も前の事だった。あまり眠らなくなり、息を吸う時、極端に胸を反らせる。
  しかし、女の独り身で育てている赤子を、そうそう医者に診せる余裕は無かった。
  明日…明日になれば…きっと…
  そう思い続けて、五日が経ってしまった。

 赤子は一向に回復する兆しもなく、日に日に息の音も弱々しくなっていた。
  そして、とうとう赤子は乳を飲まなくなった…
  もう、ぐずぐず迷っている暇はない。
  そう決心したのは、野良仕事を途中で切り上げて来た、夕刻前のことだった。
  加代は、小さく頷き、自分に勇気を奮い起こさせた。
  行こう!隣村のお医者の所まで。

 この時代、女が一人で夜道を行くのは、正気の沙汰ではなかった。

  追い剥ぎや、人さらい、そして幽鬼が跋扈している時代だ。

 特に、加代の住む村の側には、朽ちた屋敷が一軒あり、その周りを囲むお堀には、気味の悪い噂があった。
  そのお堀は、俗に「おいてけ堀」と呼ばれ、その側を通る者に幽鬼たちが「おいてけ…」と声をかけるのだ。
  そして、お堀の中から手が伸びて来て、引きずり込もうとするのだそうだ。
  何人かの者が、引きずり込まれたという話も聞く。

 「おいてけ堀」を迂回していけばいいのだ。
  加代は、すぐに隣村へと行く身支度を整えた。

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