待ち合わせ

は渋谷駅を下りると、南口へ向かった。
  人の波よけるように歩き、南口を抜けると、モヤイ像のある広場が見えた。

 はこの場所が大好きだった。
  まるで動物園みたい。
  そう思うのだ。今も、種々雑多な人々が立ち、あるいはモヤイ像の回りに座ってだれかを待っている。
  ホステス風のケバ目の女性は客との同伴待ちだろうか? 黒人3人はさきほどからずっとヒソヒソと話をしている。スーツ姿の男は商談の相手を待っているのだろうか。お父さんの帰りを待っているのか、子どもを連れた中年婦人の姿。変わったところでは、野球のユニフォームに身を包み、野球帽を被り、スパイクまで履き、肩からバットが入っているであろう長いバッグを持った青年まで居る。
  動物園よりも種類が豊富かも…
  自身は、高校の制服姿のままで、大きな黒い鞄を持っている。同じような格好の女子高生はモヤイ像の回りにたくさん居た。
 
 は携帯を取り出すと、『着いたよ』とだけ打ち込んだ。
  よーくモヤイ像の回りの人を見ているが、ほとんどが携帯を操作しているため、誰が相手かは分からない。
  すぐに『待ってたよ。やっと来てくれたんだ』と返信メール。
  『ごめんごめん、列車遅れたみたい』
  『でも、来てくれて良かったよ。いたずらかと思ったから』
  『大丈夫、私はちゃんと来てるよ。そっちはお金ちゃんと持ってきてるよね?』
  『大丈夫、まかせて』
  『あと、サイトに書いてあった、小栗旬君に似てるというのはマジ?』
  『一応、周りからよく言われる。でも緊張するなぁ、エンコーなんて初めてだからさ』
  『そうなんだ。私は結構あるけどね』
  『ところで、そろそろご対面といきたいんだけど、キミってどんな格好?』

 渋谷駅の柱の影に身を潜ませてモヤイ像の周りが見えるように隠れた
  いつもの手段だった。
  まず、相手の容姿を確認する。オタク系は× イケメンだったら○ イケメンじゃなくても優しそうでお金持ちそうだったら◎ もちろん警察だった場合はソッコーで逃げる。
  はモヤイ像の周りに目を光らせて、まずは女性を探した。
  モヤイ像の正面辺りに、綺麗な女の子がいた。ロングヘアーに、白いゆったりとしたシャツ、スキニージーンズが羨ましくなるほど似合っている。
  あのコに決めた。

 『私の格好はね、ロングヘアで、白いシャツにスキニージーンズ』
  送信っと。
  あとは、その女の子を見張っていれば、どんな男が近づいてくるかで、相手が分かる。 
  突然、モヤイ像の周りが悲鳴と喧騒に包まれた。
  さきほどのロングヘアーの女性が地面に倒れて、血まみれになっている
  その上で、野球のユニフォームの男がバットを何度も振り下ろしていた。
「このアバズレ! 売春婦! 腐れマンコ! 死ね!死ね!死ね!」

 

 

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