『ウワサの真相! マキエの正体!!』 東和民俗学教授「しかしですね。現実に見た者が居る以上、そう頭から否定は出来ないのでは」 山形病理学教授「では、その人を連れてきてもらいましょう」 アナウンサー「ええ、では、渋谷のスクランブル交差点にて目撃したという人物を3人お連れしましたので、その方々からお話をお伺いしましょう。まずは近藤さん」 近藤「え、は、はい」 アナウンサー「あなたは、先月の渋谷交差点パニック事件の時に現場にいらしたんですよね」 近藤「はい、居る事には居ました…」 山形病理学教授「歯切れが悪いな。居たか居ないか、どっちかしかないんだ、はっきり答えなさいよ、はっきりと」 東和民俗学教授「ちょっと、山形教授、証言者にプレッシャーをかけるような言動は謹んでください。みなさん、脅えているじゃないですか」 山形病理学教授「それはテレビ出演の緊張か、もしくは虚偽の発言によるものじゃないのかな」 アナウンサー「教授、少し黙ってください。まず近藤さん、あなたはその渋谷交差点でなにを見たんですか?」 近藤「え? あの、女の人が二人」 アナウンサー「それは、神谷さんも同じですか?」 神谷「え? あ、あの…」 アナウンサー「どうぞ、落ち着いてください」 神谷「私も、女の人を見たには見たんですが…」 山形病理学教授「またまた歯切れが悪い」 東和民俗学教授「教授! 少し静かにしてくれませんか」 アナウンサー「川北さんも同じですか?」 川北「ええ、同じです。二人の女性をみました」 アナウンサー「それはどんな様子の女性でしたか?近藤さん」 近藤「……」 アナウンサー「近藤さん?」 近藤「…は? ええ、はい、なんでしょう?」 アナウンサー「その、渋谷の交差点をパニックに陥れた女性というのは、どんな女性だったんですか?」 近藤「僕の方から見た感じなんですけど… 一人は顔の皮が剥がれてぶら下がっていました」 アナウンサー「神谷さんは?」 神谷「ええ、それは同じなんですが…」 アナウンサー「川北さん?」 川北「一緒です。顔の皮が剥がれた女性が、右手にカッターナイフを持って立っていました」 山形病理学教授「はは、まるっきりマキエそのものって事だ」 アナウンサー「この三人の方々には、それぞれその女性の絵を描いてもらいましたので、そちらを御覧いただきましょう」 東和民俗学教授「どれも同じ特徴を捉えています。顔の右半分の皮が剥がれ、右手にカッターナイフを持ち、左手に倒れた女性を抱えている」 山形病理学教授「失礼だが、三人さんはこの絵をどこで描いたのかな?」 近藤「あのー、はい、各自の控室で…す」 東和民俗学教授「もちろん、全員を同じ場所で描かせるような事はしません」 山形病理学教授「しかし、当然、目撃現場は同じ渋谷交差点な訳です。集団心理が働いて、別のモノを同一に見るということは十分に考えられる」 アナウンサー「実は、携帯で写真を撮った方もいらっしゃったので、そちらも御覧ください」 山形病理学教授「はん、これはまた、なんの役にも立たない写真だ。ほとんど露出不足か、ピンぼけもいいところだ。二人の女性らしき影が写っているだけにすぎん」 東和民俗学教授「しかし、実際に渋谷交差点の中央に、なんらかの女性が二人居たことの証明にはなる」 山形病理学教授「そんなの当たり前でしょう! 渋谷の交差点に何組の女性の二人組が居たことか。考えてみなさい」 東和民俗学教授「交ぜっ返すのはやめなさい。実際、写真から見て、全員が同じ二人組を撮っているのは間違いない。しかも、一人は倒れて抱えられている。彼らの言っている事とまったく同じじゃないか」 山形病理学教授「交ぜっ返しているのは、あなたでしょ! 二人の女性が居た。その一人の顔の半分に腫れ物か何かがあった。それに驚いて小さなパニックが起きた。そこへ集団心理が働いて、大きなパニックへと変移した。ただ、それだけの事を、なんでマキエなどという妖怪じみたモノと同一視するのか、そこのところを説明しなさい」 東和民俗学教授「現実に起こったことを見なさい。マキエと呼ばれる人を見たと、パニックが起こり、その中心で実際にマキエとおぼしき女性が写真で撮られた。否定をする証拠が何一つ見当たらない! 否定する根拠を示しなさい根拠を」 山形病理学教授「根拠ですか?」 東和民俗学教授「ええ、根拠です」 山形病理学教授「あなたも民俗学者なら、すでに渋谷パニック事件の前から、ネット上の都市伝説として、マキエという名前が囁かれていたのはご存知でしょう?」 東和民俗学教授「ええ、知っています」 山形病理学教授「では、こちらのフリップを見てください。実に馬鹿げたというか、ふざけた名前だ。『ほらほらホラーがやってくる』というサイト。『からす』という正体不明の人物が書いているホラー小説サイトです。この存在はご存知か?」 東和民俗学教授「い、いえ」 山形病理学教授「ここに、全部書いてある! マキエや、カッターナイフの事まで、何もかもです。要は、マキエなんていう存在は、どっかの馬の骨が創った、ただの創作物に他ならない。それが一人歩きして都市伝説になっただけで、存在なんかしないんだ!」 東和民俗学教授「…それが渋谷パニック事件前に書かれたという証拠は」 山形病理学教授「もちろんありますよ。実際、これらを読んでブログや何かに感想を載せている人がいますからね。いいですか? 都市伝説なんていうのは、こんなモンです。近藤さん、神谷さん、川北さん、あなたたちも案外このサイトを読んでいたんじゃないですか?」 近藤「僕は、読んでません」 神谷「私は、たしか友人に聞いた事があるかも…」 川北「……」 山形病理学教授「まさにQ・E・D、証明終了というヤツですか、ね、東和教授」 神谷「で、でも、あの…」 アナウンサー「神谷さん、なにか新しい証言が?」 神谷「はい、あの、カッターナイフを持っている人は知らないんですが、その人に抱えられていた女性を……知ってます」 アナウンサー「え? マキエに抱えられていた女性を知っていると?」 近藤「ぼ、あの、僕も知ってます」 山形病理学教授「どういうことかね」 近藤、神谷「この人です」 チキチキチキチキチキチキチキチキチキチチキチキチキチキチキチキチキチ… 立ち上がる川北、右手のカッターナイフを閃かせると、噴出音と共に血しぶきが上がる。画面が血に染まり、悲鳴と、さらなる血潮が上塗りされる。
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