公衆便所

深夜の帰り道。
  ふみえは尿意を催して、仕方なく公園の公衆便所に飛び込んだ。
  深夜のため、どのブースも扉は開いている。
  すぐに適当なブースに入って、鍵を閉めて、スカートたくしあげた。

  途端、上から何かに覆い被された。

  いや、液体だ。
  頭から液体をかけられたのだ。
  しかも、明らかにガソリンの臭いだった。
  さらに、ドアのすぐ外で、ジッ、ジッ、というライターをこする音がする。
 
  ふみえは恐怖のあまり、鍵を開けて出ようとしたが、誰かが向こうから抑えているらしくドアは開かない。

「マニー、マニー」
  突然、ドアのすぐ外から男の声が聞こえた。
「マニー、マニー」
  ふみえは咄嗟に持っていた財布をブースの壁越しに投げた。
「アリガト」
  という声と共に、何者かが走り去っていく足音が聞こえた。

 

 

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