帰省

 夕方の6時50分、携帯電話が鳴った。
  見ると、実家からだ。

「ごめんね、電車遅れちゃってるみたいで」
  と真理子が言うと
『早く帰って来い』
  ぼそりと声がして、電話は切れた。

 実家に帰るのは一年ぶりだ。ぶっきらぼうな父をはじめ、家族のみんな待ち焦がれてくれているのだろうか。

 真理子は微笑みながら、携帯電話をしまった。

 
  夜の8時になって、ようやく実家に辿り着いた。
  が、しかし、家は物々しい雰囲気に包まれていた。
  パトカーが辺りを赤く照らし、何人もの警察官が実家に出たり入ったりしていた。

 近所の顔見知りのおばさんを見つけると、真理子は慌てて聞いた。
「い、一体、どうしたんですか?」
「あ、真理子ちゃん。あんた、無事だったんだ!」
「うちで、なにが?」
「落ち着いて聞くんだよ。あのね…、家族みな殺しだって」
「そ、そんな、夕方には電話があったのに……」

  真理子はその場に崩れ落ちそうになった。

 その横で、顔見知りのおばさんは不思議そうに言った。
「電話って…。犯行時間は今朝だったようだよ」

 

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