いじめ2
 
こちらの作品は連作となりますので、前作「いじめ1」から読んでください。

「そ、それはまたご不幸で…」
  私は上げかけた腰を、再びソファーに降ろした。
  思わず、引っ張り上げようと、北沢さんに伸ばした手も離す。
「つまり、ご相談は、生きていない子をいじめてる裕太君をどうしたら良いか?という事ですね」
  私は机の上に広がった、数々の暴力の跡、弟への憎しみの絵を見つめていた。
「そうなんです。お腹に純太がいる間は、本当にやさしい子だったんですよ」
「はあ」
「実は、純太という名前も、裕太が付けまして。私たち夫婦も仲の良い兄弟になればと思って、そのまま純太という名前に決定していたんです」
「それが、生まれなかった……」
「…はい。生まれてこなかった事に、裏切りみたいなのを感じてるんでしょうか?」
「それは…どうなのでしょう」
「お腹にいる間は、よくお腹に耳を付けて、『まだかな、まだかな』とか言っていましたし、私の負担を減らそうとしてくれたんでしょうね。家事なんかも、出来るだけ手伝ってくれまして……
「はあ、凄く良い子だったわけですね」
「どちらかというと、私の方が、あの子に冷たく当たってしまってたくらいで」

「それはどうして?」
「舌が変わる、って言うんでしょうか、妊娠中は今まで好きだったモノが嫌いになったり、炊きたてのご飯の匂いが気持ち悪くなったり、しますでしょ?」
「はあ、そう聞きますね」
裕太は、よく妊婦用のレトルト食品を作ってくれたり妊婦用の栄養ドリンクを開けてくれたりしたんですが、なんだかトイレの洗剤を飲んでるみたいな味で
「はあ…」
「それで、裕太『要らない!』と強く言ってしまったりしました」
北沢さんはまた照れくさそうに笑った。
私はまた何かひっかかるモノを感じた。
「旦那さんはそういう事は手伝ってくれなかったんですか?」
「いえいえ、夫の方がもちろんメインに家事を手伝ってくれてました」
「すいませんが、旦那さんがそのレトルトやドリンクを作ってくれた時は、妙な味はしましたか?」
「それがなかったんですよ。作り方の問題なんでしょうか? まあ、作り方と言ってチンするだけか、封を開けるだけなんですけどね」
「家事全般、旦那さんと裕太君が?」

「まあ、手伝う程度ですけど。やはり私がやらないと駄目な所もありますし、妊娠中でも体を動かさないといけないと、お医者様に言われましたし」
「失礼ですが、トイレ掃除は?」
「ええ、基本は私が」
「何か変わった事に気づきませんでしたか?」
「ええ、そう言えば、洗剤の減りがずっと早かったですね。男性の掃除って大雑把だから」

 私は戦慄の中で、職員室の窓の外を見た。
  校庭の中を、ランドセルを背負って歩く北沢裕太の姿があった。
  思わず、私は職員室から飛び出していた。

 

トップページへ戻る

 

広告 [PR] 再就職支援 スキルアップ アルバイト 無料レンタルサーバー