人ゴミ

 駅を降り、一本小道に入ると人込みが出来ていた。
  何の人込みだろう?
と、気にはなったが、激しい写メのフラッシュの中、疲れた体を人込みに割り込ませるのも面倒くさく、その人込みをやり過ごした。

  翌日、朝。
  ニュースで見ると、通り魔が男性をハンマーで殴り殺したのが分かった。
  怖いとは思いながらも、いつものように会社に出勤する。

  帰路。
  残業が立て込み、最終電車から降りると、人は誰も居なくなっていた。
  足早に改札を抜け、駅舎を抜けるといつもの小道が待っていた。

  小走りに小道を走り抜けていく。
  そこにドーン!と来た。
  頭がフラフラとして、思わず倒れ込み、後頭部を触ると不気味に腫れている。
  ぬらぬらとしているのは出血をしているせいか。
  死ぬ!

  生存本能が必死に抗い、携帯電話を取り出したが、すぐに誰かに蹴飛ばされてしまった。いつのまにか人込みに囲まれていたのだ!
「た…た、すけ…て」
  なんとか言葉に出したが、誰も聞いていないようだ。さきほどから携帯電話の『カシャッ』という音と、フラッシュ光が瞬く。
「き、きゅ…きゅう…救急車を…救急車を」
  フラッシュ光。
  シャッター音。
  フラッシュ光。
  シャッター音。
 
  ついに力尽きて死んでしまった死体には、なんの興味もないらしく人込みはさっさと死体を置き去りにして去って行った。

「え?救急車? 誰か呼んでたでしょ」

 

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