バラバラ2

黄色い立入禁止のテープが、大きな公園を一つ囲んでいた。
  その中央付近に、ブルーシートがあり、人間型に膨らんでいた。
  河瀬警部はゆっくりとしゃがむと、ブルーシートをめくった。 
 熱気すらともなった血の臭いがむっと沸き起こる。
  途端に、隣にいた林田巡査がうめき声をあげて、口元を抑えた。
「おい、吐くならヨソヘ行けよ」
  と河瀬警部
「い、いえ、だ、大丈夫です…」
  と、苦い唾を飲み込む林田巡査。
 
  ブルーシートの中には、一人の女性の死体があった。
  その死体は、指の一本一本、目玉、手首など細かく切り分けられ、公園の各場所から見つかったのだ。
  顔などはまるでモンタージュ写真のように輪切りに四つに分割されてしまっている。

 林田巡査むせ返るような血の臭いの中、手帳を取り出すと報告を始めた。
「えー、第一発見者は近所に住む中村貞三、七十四歳。日課の朝の散歩の最中に、連れていた犬が、被害者の右手人差し指をくわえ、それを取り上げてみるとマニキュアが塗られていて、人間の指だと分かり、通報したとの事です。その後、所轄署の捜査員が公園内を捜索した所、各部位が見つかりました」
「なるほど」
 河瀬警部は被害者の指を見た。すべてが綺麗に赤いマニキュアで彩られている。
「これで全身揃ったのか?」
「はい、先ほど言いましたが、右手人差し指が一部、犬によって食べられていましたが、それ以外はすべての部位が、この公園内で見つかっています」
「一体、何カ所にバラされてるんだ」
「56カ所です。右手人差し指は東口付近の植え込みから。右手中指は西口近くにある公衆便所の中から。右手薬指は同じく西口の近くにあるベンチの後ろから。右手小指は」
「おいおい、56カ所全部言う気か。それは、あとで捜査本部で図式にして見せてもらうよ。口の部分で上下にバラされてるが、歯型は無事だったんだろ? 身元は確定してるんだな」
「いえ、それが、この町内の歯医者には被害者に該当するカルテはありませんでしたので、現在、範囲を広めて捜査しております」
「指紋からは何か分からなかったのか?」
「前科者リストには該当者は居ませんでした」
「DNAは?」
「科警研がサンプル血液を持っていきましたので、じき結果が出るかと」

「あとは、聞き込みと、失踪者リストをめくるしかないか…」

 大きなため息をつくと、河瀬警部はブルーシートを元へ戻した。
  そこへ一人の捜査員が走ってきた。
「科警研からの調査報告書です」
  河瀬警部は調査報告書を受け取り、文字をじっと目で追った。その目は、徐々に恐怖の色に染まっていき、呼吸が荒くなっていく。
「警部なにか?」
  隣の林田巡査が声をかけてくる。
「こ、こいつは、俺たちが思ってる以上にとんでもない猟奇殺人事件かも知れんぞ…」
「どういう事ですか…?」
「ま、まだなんとも言えない…。俺の推理が間違っている事を、心から願う…」
「警部……」
「科警研の連中を呼び戻せ。この死体をもっと詳しく調べさせろ。それから歯型の捜査は日本中に範囲を広げろ」

 3日後。
  徹底した死体の検査が行われ、歯型の捜査も日本中に及んだ。
  そして、結果の報告書が河瀬警部の元へと運ばれてきた。
  報告書を開く河瀬の顔が青くなり、ぞっぷりと顔から汗が吹き出してきた。
「警部、どうされたんですか?」
  林田巡査が素早く、河瀬の異常に気付いて近づいてきた。
「は、歯型は日本中の歯科医のカルテに該当者は居なかった」
「そんな…。明らかに治療痕はあったのに…」
「あと、これがDNA検査の結果だ…」
 河瀬警部林田巡査に報告書を渡した。
   ずらりと並ぶ、検査結果の羅列。
「え、どれが今回の被害者のDNAですか?」
「何人分ある?」
「えーと、56人分ですか」
「つまり、そういう事だ…」
  林田巡査の顔から、一斉に血の気が失せていた。

 

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